こんにちは。
GREENDOG東京ミッドタウンクリニックの井上です。
減感作療法とは、アレルゲン免疫療法ともいい、アレルギーの原因である「アレルゲン」を少量から投与することで、体を慣らし、アレルギー症状を和らげる治療法のことを言います。
アレルゲン免疫療法の効果発現機構は十分には解明されていませんが、以下のような働きが考えられています。
制御性T細胞(過剰な免疫反応をおさえる)を活性化し、Th1細胞(アレルギー反応をおさえる)が増加し、Th2細胞(アレルギー反応を促進する)の増加をおさえ、IgEとアレルゲンの結合を妨げるIgGなど(抗体)が増加する。
このように、複雑に免疫反応が変化することで、効果を発現すると推測されています。
治療法自体の歴史は古く、日本でも漆を扱う職人が舌下に少量の漆を塗り、少しずつ量を増やす事で、漆のアレルギーを起き難くさせるという事は慣習的に行われていたようです。
医学的には、L. Noon (1911年)らの枯れ草熱に対する予防接種の検討が減感作療法の初の試みとも言われているようで、その歴史は長いです。
そんな減感作療法ですが、近年では犬においてもアトピー性皮膚炎の治療選択肢の一つとなっています。
犬の減感作療法の一つで、「アレルミューンHDM」というものがあります。これは、日本で唯一犬用の「お薬」として使用が許可されている、「国産」の減感作薬です。
アレルミューンHDMは使用までにはその他の疾患の除外が重要で、ダニ(ハウスダストのうちのコナヒョウヒダニ)が原因でアトピー性皮膚炎になっている犬に、効果が期待できる減感作療法薬です。
そのため、アレルミューンHDMの使用前には、ダニが原因で犬アトピー性皮膚炎の症状が出ているのか確かめる検査も必要になります。
使用までに少しハードルの高い治療薬ではありますが、その有効性に関しては発売当初からも続々と報告がなされています。
実際、私も多くの患者さんでアトピー性皮膚炎症状の改善を実感しております。
今日は、そんな日本発信の減感作薬が海外でも評価された、という話です。
An open study on the efficacy of a recombinant Der f 2 (Dermatophagoides farinae) immunotherapy in atopic dogs in Hungary and Switzerland.
Fischer N, Tarpataki N, Leidi F, Rostaher A, Favrot C.Vet Dermatol. 2018 Jun 17.
この論文の結論としては、組み換えDer f 2アレルゲン(アレルミューンHDM)が、コナヒョウヒダニに感作されたヨーロッパのイヌにおける古典的なアレルゲン免疫療法よりも早く効き、そして効果的であることを示唆する。と締めくくっています。
獣医療においても、日本発の治療手段が世界に広がっていくというのは誇らしいことですね。最近では、日本発で世界初の犬の膵炎の治療薬も話題を呼んでおります。(また報告しますね)
今後も日本が世界に先駆けて、よりよい治療の選択肢が増えてくることを期待しております。
写真(向かって左)は今まさにアレルミューンの治療を受けている、マロウちゃんです。隣は可愛い兄弟のポワロちゃん。一緒に頑張ろう!
