今回は猫のワクチンについてお話します。
このブログでは、最新のガイドラインをもとに、必要な予防や接種の考え方をわかりやすくまとめました。
🐱ワクチンの目的 ~なんのために打つの?~
「完全室内飼いだから、うちの子には必要ないかも」
「毎年打つのって、ちょっとかわいそう…」
「子猫の時に猫風邪になって、その後は潜伏感染するって言われたけど」
そのようなお話を伺うことは多いです。
しかしワクチンは“万が一”の時に猫ちゃんを守ってくれる、または重症化を防いでくれる大切な予防医療です。
外に出ない猫ちゃんでも、飼い主さんの衣服や靴を通じてウイルスが持ち込まれることがあります。
特に子猫期は免疫が不安定で、感染症にかかると重症化しやすい時期。だからこそ、その子に合った予防を選ぶことが大切です。
🌍世界基準で考える:WSAVAのガイドラインとは?
猫のワクチンについては、WSAVA(世界小動物獣医師会)が定期的にガイドラインを発表しています。
この組織は、世界中の獣医師が協力して「科学的根拠に基づいた予防医療」を推進している団体です。
2024年版のガイドラインでは、ワクチンを「コア(基本)」と「非コア(選択)」に分け、猫の生活環境に応じた柔軟な接種を推奨しています。
つまり、「毎年打つべき」ではなく、「その子に必要なものを、必要なタイミングで」という考え方が主流になってきています。
💉 コアワクチンってなに?どんな病気を防げるの?
コアワクチンは、基本的にすべての猫に推奨されるワクチンです。
予防できるのは、以下のような感染力が強く、命に関わることもある病気です。
| 病気 | 病原体 | 主な症状 | 特徴 |
| 猫汎白血球減少症 | 猫パルボウイルス | 嘔吐・下痢・免疫低下 | 高い致死率。特に子猫は重症化しやすい |
| 猫ウイルス性鼻気管炎 | 猫ヘルペスウイルス | くしゃみ・鼻水・結膜炎 | 慢性化しやすく、再発することも多い |
| 猫カリシウイルス病 | 猫カリシウイルス | 口内炎・発熱・関節炎 | 症状が多様で、重症化することもある |
これらは、一度感染すると治療が難しく、長期的な影響を残すこともある病気です。
これらのウイルスやその他のウイルスおよび細菌と混合感染により重篤化することもあります。
さらに特効薬がありません。(一部限定的に使用できる薬剤はあります)
だからこそ、予防がとても重要になります。
WSAVAガイドラインの2024年の改訂ではこの3つのコアワクチンに猫白血病ウイルス(FeLV)感染症が条件付きでコアワクチンに追加されました。
この感染症は、リンパ腫などの造血器腫瘍や貧血、免疫抑制を引き起こす病気です。猫白血病ウイルス感染症のワクチンがコアワクチンとなるのかは以下の状況で考慮されます。
・外に出る猫、または同居猫が外に出る場合
・猫白血病ウイルス陽性猫が同居にいる場合
またFeLVに既に感染している場合はワクチンの効果が期待できないことがあるため、接種を考慮する場合は事前にウイルス検査を実施して感染の有無を確認する必要があります。
ただしFeLVのウイルス検査陽性=すぐに重い病気になる、というわけではありません。
「陽性」と聞くと不安になるかもしれませんが、感染=すぐに発症、というわけではありません。
実際には、感染していても元気に過ごしている猫ちゃんもたくさんいます。
大切なのは、検査結果をもとにその子に合ったケアや予防を考えていくこと。
もし陽性だった場合も、焦らず、獣医師と一緒に今後の方針を立てていきましょう。
🐈子猫のワクチン接種
子猫は生まれた時に母猫からもらった抗体(MDA)があり、最初のうちはこの抗体が子猫を守ってくれます。しかしMDAは時間の経過とともに減少していきます。そのためそのタイミングに合わせて複数回のワクチン接種が必要になります。複数回接種するのは、この時期のMDAは子猫を守ってくれるほどの量は無いけども、接種したワクチンには反応して子猫の抗体を作る反応を邪魔してしまうからです。
WSAVAの推奨する子猫のワクチン接種スケジュールは以下の通りです。
・生後6-8週で1回接種
・その後2-4週間隔で接種を繰り返し、16週齢以上まで継続
・生後6カ月で追加接種:ブースター

16週齢以上での接種で子猫は自前の抗体を十分量作れるようになり、生後6カ月のブースター接種で免疫をしっかりと定着させます。
一例として最少回数でやっていくとなると、8週齢、12週齢、16週齢、6カ月齢の4回になります。
このブースター接種により長期間にわたり感染症から身を守れるようになります。
ブースターワクチンの接種までできたら、その後は飼育環境の感染リスクに基づいて接種間隔を決めます。
| リスク | 状況 | 接種間隔の目安 |
| 低リスク | 完全室内飼い/単頭飼い | 3年以上に1回 |
| 中リスク | 完全室内飼育だが多頭飼い/他の猫を預かることがある等 | 1~3年ごとに1回 |
| 高リスク | 外出あり/ペットホテル等で1年以内の接種証明書が必要/譲渡前後 | 毎年接種 |
💉副反応についても知っておこう
ワクチン接種後に、まれにしこりや一時的な元気消失が見られることがあります。
特に猫では、注射部位に腫瘤ができる「注射部位肉腫(FISS)」という副反応が知られています。
ただし、発生率は非常に低く、接種部位の工夫やワクチンの種類選択でリスクを減らすことができます。
ワクチンの副反応のリスクに関係しているのが、アジュバントと呼ばれる成分です。アジュバントはワクチンの効果を高めてくれますが、猫ではまれに炎症を引き起こしてしまうことがあります。
現在はアジュバント未添加のワクチンでも十分効果を得られるワクチンも出てきており、当院でもアジュバント未添加のワクチンを採用しています。
また接種部位については従来の肩甲骨間ではなく、下の写真の部位に接種することで早期発見や対応がしやすいです。

🐾 まとめ:ワクチンは「その子に合った守り方」を
ワクチンは、猫ちゃんの命を守る大切な手段。
でも「打つこと」だけが目的ではなく、「その子にとってベストな守り方」を選ぶことが本当のゴールです。
完全室内飼いか、外出するか、他の猫との接触があるかなど、ぜひ獣医師と相談しながら、最適なプランを立てましょう。
気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
監修 : 篠原 一輝

